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「今日はこれから帰りですか?」
部屋を出ようとした高岸に、女性はそう問いかける。彼は頭を掻きながら「いいや、これから生放送のニュース番組の撮影だな。……今日の話は内密にしとくよ、吉川君にはまだ借りあるからな」と言い終わる同時にドアを閉め、部屋から出て行く。
「……櫻庭さんに浅霧さん、相模さん、か」
「懐かしい名前」と小さくぼやくその瞳に薄く涙が浮かび、彼女は「ドライアイかな!? ドライアイだな!?」と無理矢理テンションを上げて同時に鳴った小型端末を取る。みると見慣れた名前が表示されており、彼女は安堵してその電話に出た。
「もしもし吉川? 今インタビュー終わったよー。雑誌には載らないけどね!」
端末から聞こえてくるのは快活な男性の声。
『おー、そうか! 一安心のようなそうでないような複雑な感じだな。大規模メンテナンスも大詰めだ、団長も久々にこっちにこいよ。ほら、たまには息抜きしねえと』
団長と呼ばれた女性はあまりあの世界には行きたくない、とは言えず。
「じゃあ、後で行ってみようかなー、楽しみ!」
と、また学生時代の悪い癖が出た。
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