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本物にそっくりの、トリストが作り出した幻影。だが、この世界に自分の姿で入れるのは所謂【メンテナンス中】と呼ばれる時間だけだ。
『よう、マスター』
メンテナンス中だというのに、私のプライベートアカウントのバトロイドが話しかけてくる。本当、作った当時から自由なやつだった。馬型――ケンターディスの鬼斬(キザン)だ。
「よ。最近忙しくてログインできなくてごめんね」
これは嘘だ。前は忙しくてもちゃんとログインしていたのに。
『まあ、社長だからな! 忙しいよな!』
そうだよ、忙しいんだよ。忙しいからあまり来れないんだよ、と言い訳する。
「やあ、団長」
聞き覚えのある声に硬直する。この声は相模さんだ。私たちが作り出した幻影の相模さんだ。
「団長さん、大丈夫ですか? 最近ログインできてないみたいで」
この声は優依さんだ。振り向かずにうん、と頷くと、「無理すんなよ」と頭を乱暴に撫でられる。この手は櫻庭さんだ。顔が見れない。見たら何かが溢れ出してしまいそうで。
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