第1話 こころのひとつぶ

お二階さん

　半年前、
二階にずっと住んでいた
おじさまがひっ越していった。
　しずかなおじさまだった。
　何度かあいさつをしただけのおつきあいだったけれど。

「夜とか、うるさくないですか」　
　いちど、しおりさんは聞いてみたことがある。
　ちょうど、朝、
お会いしたときが一度だけあったから。

　夜に友だちとパーティもするから、気になっていた。

　「大丈夫だよ。
　お互い様だし。
　それよりボクのほうもうるさくないかい。
　夜中にトイレによく起きるんだよ」

「大丈夫です。
　私も夜中にトイレに行くし。お互い様だし」

　二人は少しだけ笑った。