【第3話】シャンプーの匂い(無料)

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都会の水道の水を飲むと、 ときどきプールを思い出す。 まぶしい太陽、 じっとり汗ばむ肌、 焼けつく地面・・・。 例えば住民票を待つ区役所で、 例えば待ち合わせの時間に早く着いて、 暇つぶしに入ったデパートで水を飲んだとき、 ビーチサンダルに海水パンツの子供達の歓声に混じって、 ジリジリと肌を焼きながら、 プールサイドに立つ自分がそこにいる。 たとえそれが真冬であっても、 うっすら脇の下に汗までかいている。 おそらくは殺菌のため使われている塩素の匂いが、 普段片すみにしまい込まれた思い出を 生々しく蘇らせるのだろう。 もしかしたら嗅覚とは、 他の五感とは比べものにならないほど、 記憶と密接に関わりのある機能なのかもしれない。
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