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雄々しき声だ。太く、厳格な強い声が研究室に響く。その声の主はまだオレンジの光の塊だが、段々と形を変え姿を現して行く。
今度はヴァロライナが驚く番だった。
「あァァァ、また勝手に出てきたなヴォルナート君!!めっ!!何度言ったら分かるのさ!!」
【こっ、こら!!頭を叩くな主、それに我は赤子ではない!!】
『ガゥッ!?』
「大地の・・・王狼・・・っ!?何故、使い魔に・・・」
【ああ、我こそは人間がそう崇める・・・狼属マントウルフが長、レルー・・・ポッ、デラデラテッラのヴォルナートだ!!】
「なんだかんだ気に入ってるんだね、それ。少し惜しいけど」
マントウルフと同じ毛の色、しかしその四足にはオレンジ色に輝く熱せられた岩石が溶岩となり鎧の様になっており、額には王冠のように同じ物が象られていた。
狼属、最高権力者(犬?)・・・首領マントウルフ、ヴォルナート。巳稀の使い魔であり荘厳な姿、最近扱いが犬になっている事が悩みである。
『何故あんたの様なファンキーでイカしたナイスガイが人間の下部、犬などに成り下がってる!?さっさと喰っちまえよ!!』
『ならぬ。我が主だ・・・二足歩行すら儘ならなかった貧弱坊やだったお前の面倒をあれほど見てやったというのに、なんて口の聞き方だ、弁えよ!!従うにたる器なのだ巳稀はな。魔法の才も、人に、狼に好かれる才も持っている。貴様とて感じたろう?』
『確かに・・・そこのプリティーガールは異彩を放ってやがる。全身の毛が粟立つがよヴォルナートさん・・・プライドは──』
『プライドなど目に見えぬ物は如何様にも自分で形を変える事が可能。他人が我の中に見るプライドは、熔岩ように形が定まっていない幻想、押し付けがましい妄想だ。孤高の長とて、撫でてもらうのは嬉しいものだぞバーナード。今の我のプライドは主に付き従う事のみ・・・貴様とてそれを感じたから、そこの女に従っているのだろう?』
『──うっ、うぅ・・・ヴァロライナは、怪我した俺を倒すんじゃなく手当てしてくれた、俺のナイスボディなんだ!!』
『バディだ、相変わらず馬鹿である』
『とにかくだ!!俺にはそういった理由があるが、あんたはそいつに何を見たってんだ!?』
『"ギアマンテ・フェンリル"が見初めた者だ。"極寒の淑女"たる資格を持つ者が現れた時、それに従うのが我の役目』
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