"prologo"-プローロゴ-

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「だっ、誰か……ぼっ、"爆撃帝"(ボンバーシーザー)を止めろォォォオオオ!!」 とある世界……建物を取り囲む様に配置された警官の中で、一際偉そうな男が声を上げた。 そこは阿鼻叫喚に包まれていた。 馴らされていた地面は罅割れ、白い壁で出来た建物の窓ガラスはほとんどが粉砕されている。 植えられた木々は火に包まれ、建物にこさえられた巨大な時計は壊れて止まっていた。 「むっ、無理よ!! あの人は警察最強の破壊人、私達みたいな半端な科学戦装じゃ太刀打ち出来ない!!」 「警察は何してるのよ!? なんで見てるだけなの!?」 「わっ、私達を助けてくれないの!?」 「警察とてやたらに手が出せない!! それくらい彼女は──」 「"実季"を……"実季"を返せェェェえエエぇぇェえェェェエエエェェェ!!」 「──"粟樟 実栗"(アワクス ミクリ)は手に負えないんだ!!」 テロかと疑う程の惨状の中、この学校の生徒と教師達は1カ所へと固まっていた。 彼等は……ここ"Grand"の世界の戦闘養育学校の生徒と教師は、警察の手によって1カ所に集められていた。 事情を聴取する為だった。 容疑は殺人……なら犯人だけを聴取すればいい。 だが、そんな事は出来なかった。 "今"……空に映されている彼女、雀宮 巳稀……被害者本人である"粟樟 実季"が学園全体に殺された……この世界の希望である筈の男に殺されたという事実が露呈したからだ。 実際、警察が信じていい様な事ではないが、事態が事態。 信憑性はあった為、確かめるだけの聴取の筈だった。 しかし……彼女の感情の暴走を想定に入れていなかったのが警察の誤算。 警察は出来るだけ学園から人が出れない様にした。 そして、奇跡的に異世界に渡った者以外の学校関係者全てを学校に閉じ込める事に成功し、関係者を1カ所に集め終わりいざ聴取……そんな時だった。 自身も警察であり、行方不明だった妹の所在と無念を知った"実栗"が他を寄せ付けない暴走を始めたのは。 燃え上がる炎の光を黒く長い髪に受け振り乱し、眼鏡を外した巳稀を大人びさせた様な顔を憎しみに歪ませ叫ぶ彼女に警察も学校関係者も戦慄する。 それ程今の彼女……猛威を奮う科学戦装"爆撃帝"は圧巻だった。
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