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くすくすと、勝手に笑いがこみ上げてくる。
見た? あの男の困った顔。面白かったわ。
心配そうに、まるで抱き起こそうとでもするかのような態度も。
普段とは違って、紳士的にさえ見えたわね。
……ああ、やっぱり今日は変ね。
あんな男のことを、可愛く思うだなんて。
それより、ええと、次は何だったかしら。
次……そうだわ、次は私が招く番。
あの男を驚かせるような、お店を探さなきゃ……。
携帯をたぐり寄せる、つもりだったところまでは覚えている。
けれど私はそこで、力つきたようだ。
何とも言えない充足感に、満たされて。
佐川に対して初めて抱いた、感情。
それが、“尊敬”の類いだと、私が気づくのは……もう少し後の話。
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