《8》

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  「は!?」 声がひっくり返るのも無理はないだろう。 いったいこの男は、何を言っているんだろうと本気で思う。 思いきり眉を寄せた私にも、佐川は動じなかった。 「ヒマなんだろう? だったら断らない方がいい」 「あなた……何を言ってるの?」 佐川の提案はめちゃくちゃだ。 仕事の発注を行うのは、鳳凰堂の方。 それを受けて動くのが、+Dをはじめとする制作会社だろう。 なのに、私がこの男の仕事を受ける……!? 「意味がわからないわ。+Dが鳳凰堂に仕事を発注するっていうの? 立場が逆じゃない」 「いいや? 個人的な仕事だよ。ある意味奉仕に近いな」 「奉仕ですって? 仕事じゃないじゃない。そんなものを……どうして私が」 無報酬で動ける人間を探しているのなら、お断りだ。 そんなの仕事じゃない。ボランティアよ。絶対に嫌。 こんな状況でも私は、鳳凰堂の御園京香としての自分を壊したくなかった。 .
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