《8》

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  そんなことはお見通しだとでも言うかのように、佐川は笑う。 「仕事ってのは欲しい時にいつでもあるもんじゃないだろう。チャンスは掴むべきだと思わないか?」 制作会社の人間らしい言葉だと思った。 仕事のコントロールをするのはこちら側。そしてクライアント側だ。 手足である彼らに選択肢など、ありはしない。 けれど、それより何より私は不覚にも、『チャンス』という言葉に反応してしまったのだ。 この男の仕事を受けたいなんて、微塵も思わない。 けれど、もし……現状を打破するきっかけになるのなら。 その『チャンス』になるというのなら、話は別だ。 私は努めて冷静さを装い、佐川にたずねた。 「あなたの仕事が……どうチャンスになるっていうの?」 ソレが、私に何をもたらしてくれるのか。 きちんと説明してもらおうじゃない。 .
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