《8》

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  「……ふー……」 大きく息を吐き出しながら、仰向けに倒れ込んだのは、自室のベッドだ。 普段ならこんな風に、外に出ていたままの格好で寝転ぶなんて、絶対しない。 けれど今日はもう、この柔らかな波に体を委ねてしまいたかった。 幸い、父にも母にも見つからずに部屋まで戻れた。 もしばったり出くわしていたりなんかしたら、きっと咎められるに違いなかった。 ……当然ね。 私だって思っているもの。 足に来るまで飲むだなんて、馬鹿らしい。って。 それに……男の前で酔い潰れるだなんて、みっともないことこの上ないわ。 ……ああ、でも。 あの男は別かしら。 もう、すでに知られているんだもの。 外面を取り繕う必要さえない。 好かれようと努力しなくていい。 私にとっては、希有な相手、ね。 .
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