《8》

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  ふん、と息を吐いて座り直した私に、佐川は思いもよらない返事をしてきた。 「さあ? それはお嬢さん次第だな」 「なっ……!?」 思わず絶句した。 本当に、いったい何を考えているんだろう、この男は。 メリットのない仕事、それも報酬のない奉仕だなんて、誰が受けると言うんだろう。 内容も何もわからないままに承諾する間抜けがどこにいると? 馬鹿げているわ。もうたくさん。 どうせまた、この男のいつもの言葉遊びの一環なのよ。 ても……それより、何より。 心の中がこれまで以上に騒がしくなるのは。 『チャンス』だなんて言われて食いついてしまった自分が情けないからよ。 浅はか過ぎて悔しくて、涙が出そう。 こんな男に頼るなんて、死んでも嫌だと思っていたはずなのに。 .
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