《8》

5/40
前へ
/40ページ
次へ
  「……帰るわ」 怒りを堪えて私は席を立った。 これ以上、無様な自分を晒していたくなかった。 許せなかった。 人の弱みにつけ込むような佐川の言葉も。 いいように遊ばれた自分自身も。 何もかも、嫌になったの。 それなのに。 「待ちなさい、オリエンがまだだろう?」 「……っ!」 そう言って、佐川は私を引き止めた。 私は何も言わずに男を睨みつけるだけ。 口を開けば、一緒に涙まででしまいそうだったからだ。 佐川はカードケースを取り出し、そこから一枚の名刺を私に差し出して言った。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2412人が本棚に入れています
本棚に追加