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[偽善行為] ひくり、 異臭に鼻が小さく動く。 「これは、酷い…」 異臭の元は猫の死骸だった。 餓死したところを烏にでも食われたのだろう。 ぐちゃぐちゃの身体に所々骨が見える。 「弱いから食われたんだね」 可哀想だとか、別に思わない。 自然の摂理とはそんな優しいものではない。 弱ければ死に、強ければ生きる。 そんな世界のルールが好きだ。 「埋葬してあげようか?いや、それはできない」 この子だけを埋葬するなんてずるいし、俺はそこまで優しくない。 「……」 そっと猫の死骸を抱き上げ、お気に入りの場所へ向かう。 途中でいろんな人に変な目で見られたけど、笑って返す。 お気に入りの場所とは、俺専用の墓地。 ここには多くの命が眠っている。 シモベだった子やこの猫の様に無様に死んでた子、鳥や動物だけじゃなくて魚や虫等、多種に及ぶ。 「……優しい、だなんて思わないでね?俺は俺の罪を払拭する為にお前を利用するだけなんだから…」 穴を掘り、丁寧に土を被せる。 「でも、もし生まれ変わったら俺の所においでよ」 また一つ増えた小さな山に手を合わせる。 これは自分の為に行う偽善行為にすぎない。 そう自分に言い聞かせてその場を後にした。 end.
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