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  『俺にお前を食べなくてはならない理由がない』 「え…?」 じゃあ、惨めに死ななくてはならないのか…。 『一緒に来い。仲間になれ』 耳を疑った。 だって狼からそんなこと言われるなんて思ってもいなかったのだから…。 「なん、で?…貴方の仲間を殺したヤツと同じ、人間、なのに…?」 『お前は殺してない』 「……!!」 一緒に来いと再度言われ、俺は泣いた。 年相応に声をあげて泣いた。 彼の背中にまたがり、縄張りへ向かっている時…。 『名は?』 「無い。数字で呼ばれてたから…」 『なら今日から"満月"だ。ちょうど今日は満月だからな。今日の出会いを忘れないように…』 「ありが、とう…。貴方の名前は…?」 『俺は……ジン。長の名だ。覚えろよ』 「うんっ」 初めて名前を貰い、初めてぬくもりに触れた。 end.
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