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[王と呼ぶ理由]
「俺、ここに来る前もある王の従者だったんだ」
何枚目かの書類を見ていた朔は、書類から目の前の満月に目を移す。
「いきなりどうしたの?ww」
「気紛れさ、ちょっと聞いてくれるかい?」
「いいよw」
流す程度で良いからネと付け足す満月に朔もそのつもりだと笑った。
「王と言っても一国の王じゃない、小さな集まりの王。…どちらかと言うと頭って呼ぶ方が似合ってたかもな、貴方の様に…。
でも何故か王と呼びたくなってしまうようなヒトだったんだ」
朔の手には書類ではなく、あたたかい飲み物が入ったカップに変わっている。
「でも死んでしまった。
…死、とは別に悲しいものではない。いつか皆が訪れるものだ。
………わかっているのに、悲しくなってしまうんだよネ、人間…生き物は」
語る満月の表情は普段となんら変わらないが、陰が落ちているように見える。
「"王"とは、呼ぶものではない。呼んでしまうものだと俺は考えてる。
だから、俺が貴方を王と呼ぶのは…」
突然窓から勢いよく風が入ってきた。
その風で書類が舞い、満月の言葉を奪う。
「ごめんw最後聞き取れなかったww」
「…そう」
「なんて言ったんだ?w」
「さぁ?気が向いたらまた話しますヨー」
「おいww」
―貴方が王と呼ばせる人間だからですよ―
end.
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