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[こんにちは、さようなら] 「あのっ」 他国…サゼルメリクに行った時の事。 後ろから声をかけられ、立ち止まる。 「……何か?」 振り向けばエメラルドグリーンのくりくりとした瞳の小柄な女性が満月を見つめていた。 「これ、落としたッスよ!」 彼女の手には綺麗な装飾が施された獅子の牙。 満月はポケットを服の上から探る。 そして入れてあった物が無い事に気付き、受け取った。 「ありがと」 「いえっ」 明るい笑顔を作る彼女に満月は眩しげに目を細める。 そしてひくっと鼻が嫌な匂いをかすめた。 ………火薬の匂い。 彼女をよく見れば銃を所持している。 この国の兵か…。 「それにしても変わったものを持ち歩いてるんですね、何ッスか?それ…」 「獅子の牙だヨ、」 「獅子…?」 「ライオン」 「ライオン…!!」 凄い!っと歓喜する彼女。 悪い子ではなさそうだが、油断できない。 「じゃあ俺、もう行かなきゃいけないから…」 「あ…名前…!!自分セラって言うッス」 「俺は…ヒミツ」 「えーっ!?」 「じゃあネ」 ひらひらと手を振り、彼女に背を向け足早にその場を後にした。 数分後。 空から小鳥が降りてきて、肩にとまった。そしてもう一匹、もう二匹…。 この国の調査をお願いしていた子達。 歩きながら彼女の事を聞いてみる。 「へぇ…彼女少佐だったんだネ、どーりで」 ちょっと普通の匂いじゃなかったワケだ。 火薬も弄ってあったし、銃も手入れが行き届いてた。 満月はニヤリと笑い、 「もしかしたら戦場で会えるかもね、」 思わず受け取った牙を強く握った。 「おっと…」 そのせいで皮膚が破れ赤い液体が溢れた。 「んじゃ俺は一旦タラゼドに帰るね、あとは任せたヨ」 小鳥の頭を撫でやれば嬉しそうに鳴き、空に舞い戻った。 満月は歩きから走りへ。 一気に街を抜けて待機させておいたサラブレッドにまたがった。 「お待たせ。さぁ、帰ろう」 蹄を鳴らし、大地を蹴った。 end.
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