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[光無き目] 背後に感じる何かの気配にトキアは振り向いた。しかしそこに広がるのはただっ広い戦場。多くの亡骸が無惨に転がっている。 気のせいか、と足を前に出そうとした時、ガサっと草が揺れた。 「……蛇?」 そこにいたのは1メートル程の蛇。 しかし、普通の蛇とは違う。 頭の所から少し平たく拡がっている。 何かの本で見たことがあるな、とトキアは記憶を巡り、それにたどり着いた。 「コブラ」 確か、そんな名前だった気がする…。 チロチロと出し入れされる赤く細い舌。 トキアは鳥肌がたった。 元々人間以外の生き物は得意ではない。 刺激しないように去った方が良いだろう。 一歩、後ろへ。 「!!」 しかしコブラはトキアを見つめたまま近寄ってくる。あろうことか、威嚇しながら。 シャーーーッ 細い二本の牙が見えた。 「ちょ、俺何もしてないじゃん…!?」 トキアは万が一のことを考え、槍を構える。 その時だった。 「こんな所にいたのかい?心配したヨ」 コブラに近寄る一人の男。 「いつの間に…!?」 突然現れた男にトキアは目を丸くするが、コブラにばかり気を引かれていて近寄ってきたこの男に気付けなかったのだ。 「うん、俺もそうだよ。…まさか!キミをおいてくわけないだろ?」 この男は誰と話しているんだ…? この場において話せるのは自分だけ…。 トキアは目の前の異常な男を見つめ、槍をキツく握る。 「キミ」 「!!!」 突然トキアに話しかける男。 「この子、傷付けなくてラッキーだったネ」 光の無い目を細めて笑う。 「アンタ、どこの国の人間だ…?アルシャイン、じゃないだろ?」 「俺?」 んー、と考える素振りを見せる。 「タラゼド。タラゼドの満月」 「タラゼド…!?」 何故タラゼドの人間が…? トキアは満月に槍の先を向けた。 しかし、満月は笑いながらその槍をおさめるように言う。 「お腹いっぱいだし、もう帰らないといけないから…早く帰らないと怖い人に怒られちゃうんだよネ。 だから、バイバイ」 躊躇なく敵に背を向ける満月。 その満月の後ろを刺してもよかったが、トキアはわざわざそんな事しなくてもいいだろうと、やめた。 どうぜ近いうちにぶつかる。 「帰ろ、」 トキアも自分のいるべき場所へ足を向けた。 end.
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