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「目や耳なんかより、
はるかに優れた能力を持っているのに、
どうして誰もそれを活かそうとしないのかしら?」
寄り目になった宇崎の顔を見て、
危うく吹き出しそうになるのを堪えながら、
倫子は言った。
「轢き逃げした車は、
タイヤに奥さんの匂いをしっかりつけて、
逃げてるわ。
宇崎さん、
恵美子さんの匂いを追いかけましょう!」
「本当かい!?
でも、もう暗くなってきたから・・・」
「宇崎さん。
匂いには昼も夜も関係ないのよ。
さあ、行きましょう!」
「うん!よろしくお願いします!」
明らかに年下とわかる女の子に、
深々と頭を下げる宇崎を
人が見たらなんと思うだろう。
しかし、
ふたりを包む夕闇は目の能力の限界で、
それに気づく者は誰もいない・・・。
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