第2話

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「先輩……ここでおろして下さい」 微かな声で私を呼ぶ。 「え?」 「吐きそ……」 「え?あ、すいません。止めて下さい」 公園の近くだったので、運転手に告げてそこで下ろしてもらった。 「先輩、帰って良かったのに」 「良く言う……」 私は小さく息を吐いて近くの自販機で水を買った。 「はい」 「ありがとうございます」 渡した水を口にした羽山の喉が上下に動いた。 「先輩」 「……何?」 ベンチに並んで座って、公園の木々を見上げていた。 桜はとうに散り去って、新たに芽吹いた若葉は柔らかな黄緑色だ。 昼間ならもっと綺麗で艶やかで、生き生きしているのだろう。 「先輩って、恋人に甘えられ無い人でしょ」 「………」 「自分が我慢すれば済むなら我慢しちゃう人でしょ」 「…………」 「それで結局恋人に去られるんでしょ?」 「それが全部イエスだったら今度は何なの?」 私の口から零れた言葉は思いの外低い声だった。 羽山が私を見て薄く笑った。 「最大級に不器用」 まだ半月も経っていないのに 仕事でしか関わっていないのに ここ迄見透かされてしまっているのは何故? 観察する程でもなく、私は滲み出してしまっているの?
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