第2話

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「ちーわー」 カフェに先に入っていた同期の香澄が私を見つけて手を振っていた。 キノコみたいなマッシュボブの髪形がよく似合っている。 香澄とは高校卒業以来暫く会わなかったけど、内定式で偶然顔を合わせて以来気の置けない間柄だ。 元々さばけた性格をしていて、人との距離が遠めな私にも遠慮無しに言ってくれる。 嫌味がなくて清々しいから素が出せる数少ない友達の一人だ。 彼女は管理部総務課に所属しているのでフロアが違い、勤務中に顔を合わせる事はほぼ無い。 大学から付き合って居た人と入社早々結婚したので同年代の中では落ち着いている。 久しぶりー、の会話の後 彼女は前のめりになって私の顔を覗き込んだ。 「ねぇねぇどうよ、羽山君」 「香澄も羽山の事知ってるの?」 「…………またぁ、期待を裏切らない返答をありがとう」 香澄は両手で頬杖をついてにこっと笑った。 「…………」 「うちらの世代で言うとありさクラスだよ?」 ありさは受付嬢で顔良しスタイル良しの同期のアイドル。 彼女の同期と分かると彼女の事を聞かれる。 仕事で関わらない人でもありさの事を知ってる事が多い。 まぁ、受付嬢だから当たり前かもしれないけれど。 そう言われてやっと羽山の知名度に気付いた。 「へぇ……そんなに有名人なんだ」 私の呟きに香澄は大きな口をあけて笑った。
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