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「先輩」
「…………」
「先輩」
デスクをとんっと叩かれはっとする。
「え?」
振り向き見上げると羽山が私を見下ろしていた。
「開札の時間です」
壁にかかっている時計を指してそう言った。
「うん」
席から立ち上がり羽山の後ろを歩いて専用PCへ向かう。
羽山の背中を見る事なんて滅多にない。
身体の線が細いな。
「…………」
香澄に言われたからか、フロアを歩く私に向けられる視線に気付いた。
その視線は女子社員からのもので、視線の先は羽山に向けられ、その流れで私にも。
「…………」
周りに興味をもて、と言われたけれど……煩わしいだけじゃないですか。
カチ、カチッ
「どうだったー?」
私達の後ろを通りすがる時、嶋野さんがキャスターの背もたれに手を掛けて覗き込んで来た。
「うちに決まりました」
振り向いてそう伝えると。
「おー、幸先いいじゃん」
と、緩い感じで労ってくれた。
「課長と部長に報告してくる」
嶋野さんは軽く上げた手をひらひら動かして去って行った。
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