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「あぁ、うん。よろしく」
高萩部長は顔の横に手を上げて、にこっと笑った。
「匠にぃ」
後ろからかけられた声に振り向くと、後ろから同期の初見が優雅に歩いて来た。
「仁(しのぶ)、その呼び方社内ではやめろ」
高萩部長は呆れ気味に苦言を呈した。
「月島グループのホテルの粗利益もうちょっと出せない?」
そんな事気に留める事もなく初見は話し続ける。
「その話、夕方の会議後でいい?」
「うん」
「じゃあ、ごめんね。木崎さん、羽山君また」
こちらに顔を向けた高萩さんは眉を下げたので、私は頭を下げて答えた。
高萩部長の去りゆく後姿を見つめてから、隣に腕組みをして立っている初見に顔を向けた。
「よ、久々」
初見が高萩部長みたいに軽く手を上げてそう言った。
「うん」
「相変わらず顔色悪いね」
私の顔を見つめ目を細める初見。
「あ、羽山、これ一応社長の息子の初見」
私が掌を向けて紹介すると、羽山は黙って頭を下げた。
「一応って酷いよね?将来社長になるかもよ、俺」
「ないない。高萩部長を差し置いて初見が社長になったら私辞める」
「酷くね?羽山もそう思わない?」
「……そうですね」
羽山がそう答えたのと同時にポケットの中の携帯が震えた。
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