第2話

22/24
265人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
羽山の言葉に固まってしまった。 「駄目だよ……それ」 ある意味パワハラじゃない。 私はピルスナーグラスのビールに手を伸ばした。 「先輩二人兄弟ですか?」 「ううん、三人。もう一人下に弟がいるの」 「長女気質ですもんね」 「……そうかな」 「一人娘だから父親は心配ですね」 「……どうだろう」 「あまり話さないですか?」 「……私が10歳の時に事故で死んじゃったの」 「…………」 「なんか、ごめん」 「いえ……こちらこそ」 魚の煮付けは甘めで、凄く懐かしい味がした。 何でだろう。 私は人に自分の事を話したりしないのに。 同類と彼が言ったからだろうか。 それともお酒のせいだろうか。 それから言葉を交わさずお酒を飲んだ。 黙っていても、それが居心地の悪さにはならない。 沈黙が気まずくない相手なんて、家族以外に会ったことがないな、なんて頭の片隅で思っていた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!