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羽山が私の手首をするっと掴んだ。
長い指が手首で輪っかを作る。
ぱっ
私は反射的に手を引いた。
「……あ、すいません」
「羽山から触れるとか意外なんだけど」
テーブルの下に引いた手を隠した。
「あー……すいません。
ちょっと気を緩め過ぎました。
先輩が思った通り同類だったからつい」
目頭を両手の人差し指で押さえながら口元を覆った羽山は椅子に凭れた。
「羽山……酔ってるの?」
同類だからこそ分かる。
ボディタッチなんてされるのも苦手だけど、自分からする事なんて滅多に無い。
「そうですね、そうかもしれません」
「水もらう?」
「……はい」
「お酒弱いなら日本酒なんて飲んじゃ駄目だよ」
「……そうですよね」
充血した眠そうな目
無造作に崩れた髪の毛
いつもシャンとしている羽山らしからぬ態度。
「すいません、先輩」
「酔ってる癖にちゃんと謝れるんだ」
タクシーの中で窓に頭を凭れながら羽山は謝っていた。
「羽山の人間らしい所が見られて良かったよ」
私は外を眺めながらそう伝えた。
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