父の花

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実際の父の事はほとんど知らない。 私が知っている父のことと言えば、母から聞いた話と、実際に会った数回だけだ。 ただ母から聞いていた父の話は、そのどれもが耳を疑うような話だった。 ある日、母が家に帰ってくると、玄関が血まみれだったことがあった。 慌てて部屋をかけ上がると左手の小指の先がなくなった父がいたらしい。 どうやら、そっちの女に手を出してしまったらしく、落とし前をつけてきたそうだ。 また母が二人目の姉を妊娠しているときは、車両を盗もうとし、警察に捕まった。 取り調べで首謀者ではなかったのに主犯にしたてあげられ、実刑を受けた。 しかもその頃自分がいた房が、7号室だったのでお腹の娘の名前を『ナナ』と付けようとしていたという。 他にも、 全く家にお金を入れず、食べ物を買うのも困難になった母は、玄米茶の玄米を拾って食べていたと言う話も聞いた事がある。 ――そんな父だ。 だから私が意外だと思うことに、取り立てて否定的に思う人は居ないだろう。
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