それぞれのさよなら―Ⅰ―

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グッ、とマスターの脚を掴む腕に力をこめる。 「あなたと違って他人を思いやることが出来るからよ……!」 そう言ってマリオネットを見上げる。 もう、首を横に振りはしなかった。 覚悟を決めてくれたみたいだ。 鎖で繋がれていたマリオネットが言った言葉。 私はあの時のマリオネットと同じ言葉を言おうと思ったが、止めた。 きっと、マリオネットの決意が鈍る。 「またね」 私は、嘘をついた。 マリオネットは頷いて――走り出した。
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