1850人が本棚に入れています
本棚に追加
触れられた瞬間、ビクッと身体が小さく揺れた。
冷え切った頬から、彼の体温が流れ込む。
「俺のこと、嫌い?」
先生はそう言って、まるで愛撫するかのように長い指で頬を撫でる。
先生…
身体の芯が熱い。――この目に、どうしようもなく惹きつけられる。
「今度こそ聞かせてよ。ホントのこと」
熱くなった耳に注がれる、甘い吐息。
やめて…
そんな優しい目で見つめないでよ……
身体が壊れてしまうかと思うほど、激しく叩き打つ胸の鼓動。
足先から頭頂へ上る、熱を帯びた痺れ。
「…キライ…傲慢な医者なんて…大っ嫌い…」
頼りない声を絞り出し、息ができなくなるほどの胸の鼓動を誤魔化すように、咄嗟に視線を外した。
すると、そんな私を見て彼はククッと喉を鳴らした。
「目は口程に物を言う…麻弥、もう逃げるなよ」
柔らかな声が耳に流れ入る。
『麻弥』――名前を呼ばれる度に、身体が熱くなる。
「…逃げてなんてない」
無意識に、声が揺れる。
「…嘘つき」
彼は私の身体を引き寄せ、しなやかな指先は私の顎を優しく支えた。
見つめ合う二人。
「…先生…」
彼に引き込まれていく心と身体。
誘われるまま瞼を閉じた瞬間、私の強がりな唇は、彼の熱い口づけで塞がれていた――。
最初のコメントを投稿しよう!