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「結婚してる相手の側に、ただ一緒にいたいだけ?そんなの、遊びの関係とどこが違うんだ?」
刺すような視線を私に向けたまま、彼はゆっくりと私に近づく。
遊びの関係だなんて...
…酷い…そんな言い方するなんて...
冷えた壁に背中をつけ、茫然と彼を見上げる。
「…やめてっ。なんでそんな事を先生に言われなきゃいけないの?正当ぶっちゃって!自分だって似たような事してるんじゃないの?」
大きく息を吸い込み、威嚇するかのようにキッと睨みつける。
「似たような事?…さっきの、彼女がどうこうって話か?」
「そうよ。名駅のバスターミナルで、綺麗な女の人と歩いてたって…」
…確かに、そう聞いたけど。
身に覚えがないと言う顔で首を傾げる先生を見て、言葉を詰まらせた。
「ん?バスターミナル…ああ、あれか。あれは違う。彼女じゃない」
先生は口角を上げふっと小さく笑う。
「え...彼女じゃない?」
――ホントに?
拍子抜けした私は、きょとんとした顔つきで瞬きをする。
「そう、彼女じゃない。それより…その借金、あといくらあるの?」
「えっ!?あといくらって…」
利子含めて120万円程ですけど――
「…そんな事、言えません。先生には関係ない事ですから」
私にとって高額でも、この人にしてみたらきっと微々たる金額に違いない。
金額を口にするのが恥ずかしくなり、思わず憎まれ口をたたいた。
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