第6話 【セカンド・バージン】

4/27
前へ
/27ページ
次へ
「その言い方…おまえ、いちいち可愛くないな」 ぷいとそっぽを向く私の横顔に向かって、先生がぽつりと呟いた。 なっ!?可愛くないって―― 「女が人には言えない借金抱えるって聞くと、風俗に落ちるイメージあるけど…コンビニじゃ緊迫感ないな」 反論する間も与えずそう言うと、先生はククッと悪戯気に笑い飛ばす。 「風俗っ?!」 そんな200万、300万程度の金額で風俗に落ちてたまるかっ! 「…ドラマの世界じゃあるまいし、ベタな。ばっかじゃないの!」 それに、緊迫感のないコンビニバイトで悪かったなっ! フンっと鼻を鳴らし、あからさまに嫌な顔をする。 私にだって、それくらいの秩序とプライドはある。 親に貰ったこの体。 不倫と言う罪を犯しても、そこまで自分を汚すことは出来ない。 …と、強がりを言いながら、「その程度の金額」の返済完了にあと何年かかるんだ? ――情けない。 意気込んでみたものの、行き場のない大きなため息を吐き密かに肩を落とした。 それに―― 「…この借金は、私自身の価値なの。…人に頼ったり、汚れたお金じゃ返せない…」 踏みしめるアスファルトを見つめ、バッグを持つ手に力を入れる。 「…自分自身の価値?」 「そう、私自身の価値。…私は、お金と引き換えに捨てられた。借金は私自身の価値。だから、私は真っ白なお金で罪を償わなくちゃいけないの…せめて、今の自分を慰めるために…」 …それが、盲目の恋に堕ちた自分への戒めだから――。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1849人が本棚に入れています
本棚に追加