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「その言い方…おまえ、いちいち可愛くないな」
ぷいとそっぽを向く私の横顔に向かって、先生がぽつりと呟いた。
なっ!?可愛くないって――
「女が人には言えない借金抱えるって聞くと、風俗に落ちるイメージあるけど…コンビニじゃ緊迫感ないな」
反論する間も与えずそう言うと、先生はククッと悪戯気に笑い飛ばす。
「風俗っ?!」
そんな200万、300万程度の金額で風俗に落ちてたまるかっ!
「…ドラマの世界じゃあるまいし、ベタな。ばっかじゃないの!」
それに、緊迫感のないコンビニバイトで悪かったなっ!
フンっと鼻を鳴らし、あからさまに嫌な顔をする。
私にだって、それくらいの秩序とプライドはある。
親に貰ったこの体。
不倫と言う罪を犯しても、そこまで自分を汚すことは出来ない。
…と、強がりを言いながら、「その程度の金額」の返済完了にあと何年かかるんだ?
――情けない。
意気込んでみたものの、行き場のない大きなため息を吐き密かに肩を落とした。
それに――
「…この借金は、私自身の価値なの。…人に頼ったり、汚れたお金じゃ返せない…」
踏みしめるアスファルトを見つめ、バッグを持つ手に力を入れる。
「…自分自身の価値?」
「そう、私自身の価値。…私は、お金と引き換えに捨てられた。借金は私自身の価値。だから、私は真っ白なお金で罪を償わなくちゃいけないの…せめて、今の自分を慰めるために…」
…それが、盲目の恋に堕ちた自分への戒めだから――。
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