第6話 【セカンド・バージン】

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身体をすり抜けていくような冷たい夜風。 ふと落とした視線を街路樹に向けると、凍えた常緑樹の葉っぱが街のネオンに照らされ、サワサワと大人しげに揺れている。 激しい感情の起伏が続いたせいか、すっかり冷めてしまったアルコールのせいか、頭がくらくらする。 「何だ、それ。バカバカしい」 呆れた響きを持つその声にハッとして、慌てて先生に視線を戻す。 「…バカバカしいってっ…ひ」――「どい」と、続けようとした私の声をかき消すように、 「そんなくだらん金と、自分の存在価値を一緒にするな!」 先生が怪訝そうに言った。 「くだらん金って…」 彼の不機嫌を露わにした表情を見つめ、押されるように思わずたじろぐ。 「さっき、欲しいモノは自由だって言ったな。…自らの呪縛から解放される、自由が欲しいって」 「……」 「自分への戒め…そう言う意味だったのか」 尻込みしながら頷く私を見つめ、先生は唇を歪めて笑みを浮かべる。 「…その自由を手に入れるために、俺を利用しろ」 「…はい?」 先生を利用する? …言ってる意味が、分からないんですけど。 「今夜一晩のお前の価値はいくらだ?」 「へっ!?…あの…えっと…それ、どういうことでしょうか?」 間の抜けた声を漏らす。 目の前に立つ彼を見上げ、大きな瞬きを繰り返す。
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