第6話 【セカンド・バージン】

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「100万!?…」 「そう、100万円。この四年間、誰も触れずに閉ざしてきた身体を開くんだもの。私にだってそれくらいの決意と覚悟がいる。言い値だって言ったのは、そっちでしょ?」 高飛車女。あんた、何様?――意図的に吐いたものの、自分のセリフに笑える。 でも、目には目を歯には歯を。イカレ男にはイカレ女を… どう? 流石に驚いたでしょ? そんな大胆な金額が、この粗末な女の口から出るなんて思って無かったんでしょ? どうせ、首を縦に振るはずがない。誰が支払う?こんな貧相な女に。 店に出しても5千円でお釣りがくるような女に。 あなたが悪いのよ。 ――私の心をかき乱したりするから…。 驚きを露わにする先生。 それを勝ち誇った視線で見つめ、これ見よがしに満面の笑みを作った。 「…面白い」 突然、先生が薄ら笑いを浮かべる。 「へっ?」 「想像以上に面白い女だ。ますます気に入った!」 先生はそう言って、口の端を上げて満足気な声を発す。 「えっ!?ちょっと、待ってっ」 全く予想外の反応。 愕然として放った声は、動揺を隠せずに見事に裏返った。 「分かった。100万だなっ」 「なっ…何考えてるの?…有り得ないでしょ…一晩100万て…頭おかしいんじゃないの…」 顔をひきつらせ、途切れ途切れに言葉を彷徨わせる。 「何を言ってる。自分で決めた値だろ?」 「それはそうだけど…」 まさか、承諾するなんて―― 私の混乱を余所に、清々しい笑みを放つ先生を凝視する。
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