第3話

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私はこの頃よく、 結斗の隣で眠った。 どこかに出掛ける事もあったが、 お互いの時間がうまく噛み合わない時が多く、 会うのはどちらかの家、だったりして、 その部屋、だったりしたから。 ベッドの上で本を読んでいる結斗の隣に 丸くなり、片手間に髪を撫でられているうちにスースーと寝てしまう。 ふと目を覚ますと、 同じように眠ってしまった結斗の抱き枕みたいになっていて、 可笑しくなって小さく笑うと、 と結斗が起きた。 疲れているから。 春だから。 ベッドだから。 この頃私がすぐ眠ってしまった理由は、 そんな単純なものじゃなかったと思う。 苛々して、めんどくさくて放り出して、 それでもどこかで取り戻したいと思っている夏海達との時間。 そう思う心。 そこから逃げ出したくなると、 どこまでも眠くなった。 けれど3年生の教室に、 3年生の結斗に、 逃げた事は一度もない。 学校が始まり、 クラスが半々だけどそれなりにバラけた事と、 新しいクラスでまた違う友達も出来た事を それなりに結斗に伝えていく。 そうすると結斗はどこか安心したみたいに頷いて、 『……そか。 そんなグループ1抜けして良かった。 いつまでもいるべきじゃなかったしな』 そう言った。 廊下で見かけると胸が少し痛い事や、 部活中でも気にしてしまう事や、 同じクラスの遥との微妙な距離感を 話してしまうからだと思う。 『……心に思ってしまう事は仕方ないじゃん。 それは無理しなくていい。嘘になるだろ』 結斗はそう言って、 読み手の私をどこまでも受け止めた。 あの日開いた佐藤 結斗と言う本の、 まだ読めていない頁がどんどん捲れていく。 たわいなくても、喧嘩をすれば止まり、 仲直りをすれば、また。
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