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あの日は、
朝から子供地曳きの声が響き、
よく晴れていて、
それでも少し風は冷たく、
その風の流れで1日中、
屋台の香ばしい匂いがずっとそこここにあるような、
そんな日だった。
『……ったくお祭りだからって
何で学校お休みにしちゃうのかしらぁ。
ほら、どいて、邪魔よ。
学校もそうだけど、何でベランダあんたの部屋に作っちゃったのかしら』
ベッドにいる私をブルドーザーの如く布団で押し退け、
母親が言った。
その手がベランダの窓を開けると、
子供地曳きの音が太陽と混ざる。
手の中にある、メール返信途中の携帯。
1通は結斗からで、
1通は町田さんからで、
最初に町田さんに。
町田さんから朝早く、届いたメールは
優しかった。
【愛ちゃん、突然だけど、
お祭りの残り、どれか一緒にいける?
予定がわからないって言ってたから、
みきとね、きっと佐竹さん達と行くんだろうねって言ってたんだよ。でも昨日私達がお祭りで会ったら、佐竹さん達と愛ちゃん一緒じゃなかったから。
じゃあ、もう一回誘ってみようって事になって。
無理ならいいからね。
佐藤先輩、ばっちり見たよ~。
すごくかっこ良かった】
結斗からはその少し後に、
【おはよ。
今日、7時、もしかしたらそのちょっと前ぐらいには体空くから連絡する。
8時過ぎからはまた乗らなきゃいけないから、ドタバタさせるけど、ごめん】
ってメールが届いていた。
町田さんには、
明後日なら大丈夫で、
結斗にはわかったと返す。
そんな優しくて何気ない、
朝だった。
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