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「、、、ねぇ瑠奈(るな)、うちのママがネコにアレルギーがあるって聞いてたよね?」
不機嫌そうにベンチにもたれかかった麻里(まり)は、折りたたみ傘を畳み直しながら聞いた。
先端からしずくが垂れ続けて床に小さな川を作り始めている。気になった私は髪を拭いて用済みのティッシュをその小川のなかに放りこみ、堰き止めを試みる。
「だって怪我してるのに、この雨の中で置いてけなかったんだもん」
「まったくあなたって人は」
私達は今、私が居候している麻里の家の近所にある動物病院のロビーにいる。アポなしで飛び込んだのだが、すいててよかった。
「それにしても、このネコ、よく見るといい毛並みだよね。こんなネコを捨てるとかありえん」
「捨てたんじゃないと思うよ」
「へ? でも路上に一人、じゃない、一匹で放置されてたんだよ?」
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