6月の雨

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スキムミルクの入ったラテに砂糖をいれる麻里。 それじゃせっかくローカロリーのスキムミルクを使う意味がないと思うんだけど。 「こっちにいたの、中3から高1までか。やっぱ1年ちょっとじゃ英語を身につけるのは厳しかったか」 「麻里みたいに生まれてからずっとこっちな人はうらやましいわ」 「でも私の日本語の作文、小学生並みよ? ママに太鼓判押されたわ」 ん? ”太鼓判” ってそういう文脈で言うか? 「指導してあげようか?」 「うー、暇があったらねえ」 麻里の両親は二人とも日本人だ。家にいるときは親と日本語で話しているせいか、麻里は日本語をアクセントもなく流暢に話す。 でもさすがに読み書きは苦手らしい。まあ漢字の習得なんて、日本にいても大変だもんね。 アメリカで転入した中学校で出会って以来、校内で数少ない日本語を話す生徒だった麻里は、なにくれとなく私の面倒を見てくれた。 二人とも同じ高校に進み、私も少しづつだが周りの人の言っていることがわかるようになり始め、学校生活も楽しくなってきた、、、と思ったのに。 ーーー ーーーーー ーーーーーーー 『来月でもう帰国!?』 『そうなのよ。東京の事務所で倒れて長期入院になった人がいるとかで、お父さんしかそのポストを継ぐ人がいないということらしいのよ』 アメリカに来て、まったくわからない言葉やら慣れない習慣に苦労して。 ようやくいろいろとわかってきて、友達もできてきて、さあ高校生活を楽しむぞーという時に。 ヒドイよ。 ーーーーーーー ーーーーー ーーー
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