テキトー人生真っ当中

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「そうなんだよ、ゆりこ。コイツチョコレートプリンスとか呼ばれて調子乗ってたんだよ」 いや、覚えてないのに調子乗れるわけねぇーだろ。 突然割り込んできた声に溜め息を漏らせば、バチリと頭を叩かれる。 「いってーな!!」 「生意気に溜め息なんかついてんのがいけないんだよ、バーカ」 女とは思えない程の怪力でオレを叩いた菜月は、ニヤニヤと良からぬ笑みを浮かべて続けた。 「元奴隷のくせに」 そう、オレは2年前の中学3年生のバレンタインの日までずっと菜月の奴隷だった。 周りからも公認された主従関係で、隣に住んでいた菜月に朝から晩までこき使われていた。 朝起こすのも、課題をやるのも、そうじをやるのも、お昼ご飯を買ってくるのも、面倒くさいことは全部オレの仕事。 できなかったら、怪力チョップが飛んてきて、オレの脳細胞が死んでいく。 正直辛かった。なんせ奴隷歴は11年。 4歳のときからずっとこの関係が続いていたのだから。 そもそも何故オレが奴隷になったのか。それは本当に意味の分からない菜月の気まぐれのせいだった。 昔から男勝りで気の強かった菜月。何でもテキトーなオレ。 家族ぐるみでやってきた海の浜辺で砂遊びをしていたオレにいきなり菜月が言い出したんだ。 「翔太!長年の決着を付けようじゃないか!」 4歳児のくせに何が長年だって今となっては思うけど、何かのドラマで言っていたんであろうセリフを口にして、ピシャリと小さな人差し指をオレに向けた彼女の瞳はいたって真剣だった。 オレはテキトーに二つ返事でオッケーして、菜月の喧嘩を何の気なしにかってしまったんだ。 そして始まった負けたら奴隷という条件付きのじゃんけん大会。 それに負けたオレは、「男に二言はないんだぞ!」とか散々菜月に責められて嫌々奴隷になったっていうわけだ。 あぁ、バカ気てる。
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