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「今が不安でしたら、幹部の皆さんには遠く及びませんが僕がいますから」
そう言って苦笑した。
「いえ、今に不安はないので安心してください。
隊士の皆さんが鍛錬を頑張っていらっしゃるのは知っているので……」
「それは良かったです」
今度はにっこりと笑った。
言葉に嘘はない。事実、厨にいても声は聞こえるし踏み込みの音も聞こえてる。
「あ、そう言えば挨拶していませんでしたね。
僕は奥沢栄助って言います、よろしくお願いしますね」
「……よろしく、お願いします。
あ、では店に入って買ってくるので待っていてもらえますか?」
奥沢さんが頷いてくれた為、何時の間にか着いていた店には私一人で入る。
「……あと一週間もせず死んでしまう人とどう仲良くしろというのでしょうね」
奥沢栄助とは、池田屋で討ち死にする三人のうちの一人。
……彼は一週間もせずに死ぬ。
本当に神様って存在は意地悪だ。
ぽつりと呟いた私の声は店員の声にかき消された。
***
「今日は本当にありがとうございました」
「いえ、気にしないでくだい!
僕も欲しかったものを買えたので」
全ての買い物を終えて歩いていると、私は前から来た人とぶつかってしまった。
「っ……すみませ!?」
「あぁ、連れの者がすまないね。怪我はないかい?」
桂、小五郎……後の木戸孝光が其処にいた。
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