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『笹岡、悪いが使いに行ってくれねぇか?
食材を買うついでで構わねぇからよ』
『はい、分かりました』
穏やかな春の日射しがギラギラと照り付ける夏の日射しに変わりだす頃。
月は水無月に入った。
そんな日の昼に、私は隊士と買い物に出る。
土方さんに使いの紙を渡されたのは今朝。ちょうど食材も無くなり出していたため買いに来たのだ。
「えっと、それでは行きましょうか笹岡さん」
「はい。
すみません、付き合わせてしまって」
そういうと、いえいえと言って笑ってくれた。
隊士は別にいらないと言ったのに土方さんにつけられた。
鍛錬などもあるだろうに……買い物に付き合わさせてしまって申し訳ない。
土方さんは京の治安が怪しいと言っていたけど、この先を知っている私からすれば当たり前だ、と思ってしまう。
新選組の名を馳せる、一番の出来事が起こるのだから。
何か物思う表情でもしていたのだろうか?
側を歩く隊士が話しかけてきた。
「あの、そんな不安げな顔をせずとも京の治安は悪くなりませんよ?
だから安心してください。此処には僕ら新選組もいますから」
それに、と言ってその隊士は言葉を続けた。
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