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「千歳ちゃん……結婚しよう」
結婚。
「好き」でも、
「愛してる」でもない。
「結婚」
それら全てを総括した言葉として、俺はその単語を選んだ。
決して軽くはない誓いを結ぶことに、最早躇いはなかった。
「け、結婚って……!」
目の前で顔を真っ赤にする少女――青葉千歳。可愛らしい癖っ毛が特徴の女の子だ。
身長は俺よりも二周り以上小さく、スタイルも年相応のそれとは大きくかけ離れている。非常に失礼な話ではあるが、誰がどうみても19歳には見えないだろう。……勿論、悪い意味ではないが。
全体的には小柄な体型の彼女だが、その瞳には意志の強い光を宿しており、かつてはあるゼクスと共に困っている人間やゼクスの為に行動していたこともある。
俺は千歳ちゃんのそんなところに惹かれた訳だが……その話はまた後にしよう、長くなりそうだからな。
ともかく、俺は千歳ちゃんにプロポーズを申し込んだという訳だ。
「え、や、あ、その……っ」
千歳ちゃんは朱に染まった頬をおさえながら、あたふたと取り乱している。これは珍しい、彼女がここまで慌てているなんて。
「……な、なんでいきなりそんなこと言うのよ……!」
何処か困ったように眉尻を寄せ、意志の強い瞳には僅かな不満と――羞恥の色。
そんな様子を微笑ましく思いながら、俺は彼女の掌を優しく握り締めた。
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