第1話

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 音がします。  僕は、目を塞ぎます。僕の体を揺らします。  と、無感情な声色で歌いながら、揺らし続けます。  メイドさんとしてはいささかお下品な歌だと思いますが、どこかで覚えてしまったのですから仕方ありません。僕は体を起こして挨拶をします。おはようございますクオンさんと、言い終わると僕の身体を抱き上げて、床に下ろします。  僕はすごく背が小さいのでこのような起こし方をされてしまいます、何度もやめてといってくれているのですが。愁さまは背丈が低うございますので、私の認識としては幼児以外にありえないのです。うん、できればその認識を改めて欲しいんだけど、なかなか僕の話は聞いてくれません。朝食ができてございます。御支度を整えてリビングへといらしてください、と告げると、クオンさんは部屋を出て行く。隣の部屋にいる妹の喪華(そうか)を起こしに行くのです。  僕は制服に着替えてから、言われた通りに下に向かい、リビングを素通りして洗面所に向かいます。洗顔をしてから丁寧に顔をタオルで拭いて、さっぱりとした所でクオンさんと出会いました。寝癖が付いておりますよと、手をブラシに変形させて丁寧に梳いてくれます。そうしてからぎゅっとハグをした後に、行ってらっしゃいませ。と、告げられます。  リビングの中に入るとホカホカの朝食……ではありましたが、多少趣の違うメニューでした。卵を入れられたおかゆにクッキー。確かこれは食べると中で膨らんで満腹になるという、ダイエットに有効なものではなかったでしょうか。  喪華が起きてくるまで待っていようかと思っていたけれど、男の僕からしたら一瞬で終わってしまいそうなメニューだ。それに入れられたハーブティーも覚めてしまう。女の子の準備は時間がかかるといいますし、全て食べてしまいましょう。  おかゆはただのおかゆではなく中華風の味がしました、何となく朝からリッチになったような気分になります。よく中身を見るとクコの実が入っていて、食感も飽きさせません。ただ残念なところは量が少ないので一瞬で食べ終わってしまうというところです。
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