第1話

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 仕方がありませんので後の分は満腹になるというクッキーで満足するとしましょう。さすがのクオンさんでも、これは手作りではないはずですから、多少ランクは落ちることでしょう。入れられたハーブティーと一緒に食べながら、僕はドタバタと妹が起きてきた音を聞きます。準備に時間がかかるといいましたが、ほとんどの処理はクオンさんがやってくれるはずなのです。僕の寝癖を直したように。防水性能を備えているはずですが彼女は何故か水は苦手と言いはり、洗顔だけは自分たちのお仕事です。だけどお風呂には入って背中を流してくれます。その基準は全くわかりません。全て食べ終わると歯を磨きに行きます。クオンさんがこの家にやってきた当初は、僕の歯も磨いてくれたのですが、最近は妹の準備に付きっきりです。本当に妹さまさまです。その作業はとても恥ずかしい行為でしたから。まずはマウスウォッシュで綺麗にしてからブラッシングをします。最初は辛くてとても耐えられなかったのですが、何度か繰り返しているうちに平気になって行きました。人間は痛みに関しては段々と鈍感になっていくのですね。  同時にリビングのドアがバターンと音をたてて開かれて行きました。それに驚いてその方向を見やると、妹がこちらに向かってくるところでした。ギュっと抱きしめられすぽりと埋まってしまいます。妹が巨人だからではありません、僕がとても小さいのです。 「あーお兄ちゃん可愛い可愛い! すごく可愛い! 超愛してる!」  喪華と僕は双子の兄妹なんですが、なぜだか妹ばかりが通常通りに発育をしてしまい、僕は小学生の頃から置いていかれていってしまいました。  それと、中高生にもなると異性の家族に嫌悪感ではないにしろ、嫌な気持ちを抱くそうなのですが、僕達兄妹はそんなことはなく、メイドのクオンさんを含めた家族三人、とても仲がいいのです。  僕達の両親はアメリカの研究所で働いている以外手紙には何も書いてくれません。僕らが小学一年生になる頃にはメイドのクオンさんを置いて、もうここ数年は会っていません。毎月の生活費はきちんと振りこんでくれるので、忘れられてはいないんだなと思うんですけど、少し寂しく思う時もあります。
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