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ちなみに生活費の管理は全権クオンさんにお任せしています。僕が使うことは滅多にありません。特に趣味という趣味も持ってないですし、ああ、でも、この町の温泉施設はよく利用させてもらっています。愁ちゃんは150センチを超えたら大人料金でいいよと言われます。こういう所も自然の多い観光都市のおおらかさといったところでしょうか。妹は温泉しか売りのねえ田舎町と言いますが、僕はこの新鮮な空気と住んでいる人たちのおおらかさがとても好きです。
「喪華様、食事が覚めてしまいますが」
「そうね、お兄ちゃんを愛でるのもいいけど、ご飯は食べないとね!」
といって、椅子に座って食事をはじめました。
残ったクオンさんは、妹に抱きしめられたことによって生じた着衣の乱れを直してくれます。手から何かを出し顔に塗ってくれます。化粧水か何かでしょうか。
それから、妹にハーブティのおかわりを告げられ、クオンさんはその準備に昧爽します。僕はカバンを取りに二階へと向かって、窓を少し開けておきます。家にはクオンさんがいるので防犯上はもちろん安全です。これはただの換気に過ぎません。
それに僕の部屋には何かを取るようなものはありません。この点好きなものでもあれば、夢中になって集めてみたりするのかもしれないですが。妹のようにあれも欲しいこれも欲しいという風には、どうやら僕は出来てはいないようです。
下の階に降りると妹が待っていて、僕がよたよたと降りてくるのを見守っています。そしてクオンさんも僕のぶんのお弁当を持って待っています。
急ごうとして以前すっ転んだことがあるので、ゆっくりと降りていきます。到着をすると妹に頭をくしゃくしゃに撫でられました、よく出来ましたということでしょうか。そして乱れたところをちゃっちゃとクオンさんが直してから、お弁当を渡してくれます。それでは行ってらっしゃいませとのクオンさんの言葉を背に出発します。
ドアから抜け出すと、眩しい朝の日差しが僕らを待っていました。それともう一人正面の家に住んでいる幼なじみのお姉さん氷柱いやし(たろし いやし)姉さんです。妹よりも一回り背が高く体つきも女性らしいのですが。
「愁たん可愛い!」
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