完結

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「ちーかげーちゃん、あさだよ、おっきしないと!」  おっきーおっきーと連呼する幼なじみ。  うるさくてしかたがないので仕方なく身体を起こす。  眼の前にいるのは幼なじみの、白河初衣だ。  イギリス出身の祖母を持つクォーター、黄金かかった髪を腰まで伸ばし、毛先までサラサラ。  顔は童顔で鼻筋も高く、瞳も強い意志を感じる青い目をしている。  昔から俺を起こすことに執着していて、実際こいつが来ないと目覚めない俺も悪いんだが 今ではこの家の家事まで担当している。  別に俺がこいつと結婚したわけではなく、父親がこの時期に海外出張に出ることになり、俺が母親に見捨てられたからこんな状態になっている。  初衣は幼い頃から女の子として育てられてきた、正真正銘の男子である。  女子の制服を華麗に着こなし、胸元には付け胸まで付けているため、まずひと目で女子だと見破れる人間はいない。体つきは華奢だが幼い頃から護身術を身に着けているため案外力も強い、幼い頃から女として育てられてきたせいか、男と呼ばれることに強い嫌悪感を持ち、女性と呼ぶことを強調するのは、初衣の悪い癖でもある。 「千影ちゃん、考え事?」 「ああ、悪い、すぐに起きるから」  声色も天然のソプラノ、地の声自体が高いのである。  よくオカマキャラやニューハーフの人たちが出す無理して出す高い声と違って、女性の歌も歌うことも出来れば、いろんな声色でしゃべることも出来る、さっき起こすときに使った甘えるような声とか。  とにかく俺は着替えを始め、男子同士であるのに不自然なことだが着替えを見ないようにして初衣は部屋を出ていく。  立ち居振る舞いも完全に女性っぽい、内股だし、楚々とした態度が、こいつが女性だったらさぞかしモテて仕方なかったんだろうなと予想される。  実際男でもいいから付き合ってくれという男子はいないこともないのだが、他に好きな人がいるからと流し目で俺を見たときは心底震えた。  初衣は昔から躾けられてきたのか、家事は万能だし男なのに男を立てるという教育を受けている、だから一緒に登校するときは常に半歩後ろを歩き、俺の家なのに台所に入れてくれない、そこは私の場所ですから、と宣言された時には、もうこの家は乗っ取られたのだと判断した。
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