完結

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 食事をしたら歯磨きをして顔を洗う、その際にも付いてきてタオルを手渡す、まるで新婚生活の夫婦のようである、多少時代錯誤ではあるが。  さっきも言った通り半歩後ろをついてくる初衣は、革靴を履くときに靴べらを手渡してくれたり、靴を履くときにも、スカートの中身が見えないように気をつけながら履く。  ロングスカートを穿いているからよほど頑張らないと覗くことなんてまず不可能だと思うんだが、教育の賜物といえばいいんだろうか。  一緒に出発して歩き出す、俺が話しかけでもしない限り初衣は黙ったまま、後ろを淡々と着いてくる。  登校するまでの道のりは、開発中の建物や住宅街を歩き、駅前の大型スーパーに客を取られてしまった、シャッター通りの商店街を歩いて抜ける。  そこを抜けるとゆるやかな坂道があり、そこを登って行くと同じ制服を来た学生と合流をする。  顔見知りの姿は見えないから、挨拶をする必要もないだろう。  先へどんどん進んでいくと、注目を集めているような気がする……慣れっこだが。  初衣はとにかく目立つ、俺の後ろで影みたいに歩いていようが、男女ともに注目の的である。  おそらく俺の姿は目にすら入っていないと思われる。  結局ということになるのだろうか、俺は何の取り柄もない凡人で、初衣は注目の的でありアイドルなのである。  彼女が本気で観客を意識した態度を示せば、それだけで大騒ぎになるだろう、この学校の美少女アンケートでトップを守り続けているのは伊達じゃない。  女子でさえ、初衣には勝てない、勝負できる気がしないと逃げ腰なのである、出来ればもっと頑張ってほしいものだ。  校内に入るとさらに注目度を増す、俺の世話をする姿があまりにも理想の女子過ぎるのである、これで本当の女の子だとしたら、俺は夜道で刺される覚悟を持たないといけないだろう。  限りなく女子に近いけど、結局は男だもんな派と、男でもいいからとにかく結婚して欲しい派に分かれているが、男だもんな派が主流である。そうでなければ世の中間違っている。  教室に入るまでたくさんの衆目に見守られながら、中に入る。  すると、教室にはもう一輪の花。  名前は神崎るい、黒く長い髪を腰まで伸ばし、いつも悠然とした態度で歩いている。様々なことに興味を持ち、飽きるのが早い。  が、俺と初衣にはかなり執着している。
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