完結

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 入学式も無事終わり、無難な自己紹介も終えて、と言ってもここは田舎町、ほとんどが顔見知りのようなものだ。いまさら紹介せずともたいていの生徒は覚えている。  自由な席に座って良いというので、腐れ縁のクラスメート龍瑠珈(りゅう るか)のと隣同士になる。 「またしても隣同士になるとは、これは何かしらの陰謀を感じますな」 「自由と決めといてそれはないだろ」  彼女の家は父親が武士に憧れていて、特に宮本武蔵が大好きで、幼い頃から剣道と五輪の書漬けで育ったという彼女は多少話し方が昔の人っぽい。  隣町の剣道場で鍛錬を積み現在二段。今年中に三段を取る心づもりらしい。  担任の先生は近郊の高校から赴任してきたという、飯山先生だ。男子からは女性の先生が良かったのとの声が上がり、女子からはもっと格好いい先生が良かったと言われている。でも 、良い人っぽいので俺は別に構わないと思っている。  瑠珈はくせっ毛の長髪で、とけとげしいウニみたいな髪をしている、よくこれで剣道の面が入るなと言うと、人間不可能はないでありますよ、との答えが帰ってくる。だったらちょっ とは髪の毛を切れよと言いたい。  と、顔なじみは前の席にも座っている。名前は会津若松アリエス。ちなみに純血の日本人である、先祖にも外国の人はまったくいない。しかし名前も苗字もバカにするとぶん殴られる ので、ほとんどの人物はスルーをする、暴力さえなければ美少女なのだが、自分の正義感というものを持っておりそれに反した行動を取るとすぐに暴力が飛ぶ、その対象が俺だけだったら、はいはいツンデレで片付くのかもしれないが、被害は全生徒に及ぶ、歩く人間爆弾、それがアリエスだった。  ちなみに入学式なのでこの学校にはまだ一年生しかいない、いないはずなのだが廊下で歓声が聞こえる。飯山先生の話が途絶えるくらいのレベルだ。  隣のクラスにイケメンでも入学したかな? と思ったが入学式ではそんな目立つ生徒はいなかったような気がする。  歓声の中に『姉君さま!』というのが混じったのが聞こえて、俺は歓声を挙げられている人物の予想が大体ついた。この田舎で、姉君さまなんて呼ばれる人間は、俺の知る限り一人し
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