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かいない。恐らくその人は、魔女のような真っ黒い改造制服を着て、黒髪のロングヘアーで、絹のような白い肌を持ち、ほとんど露出していないスカートを穿き、腕を組んで窓にでも寄りかかっていると思われる。
「相も変わらず、すごい人気でありますな、春音殿は」
「今日は入学式だから来なくていいって言ったのに……」
榊春音、俺の姉である。
一言で言えば孤高の存在、冷血でサディスト、残虐無比で、誰に対してもそっけないのだが、楚々とした態度と丁寧な物腰で、いつの間にか姉君さまとの愛称が広がった。
ちなみに、アリエスの天敵でもある。がたがたと震えだしている様子から、それがすぐに分かる。
「今日は三回殴られたでありますからな、さぞ厳しいお説教が待っているのでしょう」
「うん、まあ、五回の時は一時間正座だったからその半分くらいだろ」
ブラコンというわけでは全くないらしいのだが、血縁者は誰よりも大事だと公言し、母様、父様と呼ぶし、俺に関しては一太と呼び捨てだ。昔は君付けで呼んでいたのだが、慣れないのでやめてくれといったところ呼び捨てになった。
その姉は俺がアリエスに殴られると烈火のごとく怒る、とにかく怒る。家に呼び出してお説教だけならまだマシで、酷い時になると漬物石を太ももに乗っけられて三〇分正座という時もある。その分俺が殴られているということになるのだが。
サディストなので、アリエスの苦しんでいるところを見てさぞや喜んでいるのではないかと思いきや、ガチで虫でも見るような冷徹な視線でずっと睨みつけてる。その場を見て以来、
俺はアリエスへの説教現場は見ないようにしている。夢でうなされたから。
「ん、どうして外が騒がしいんだ? 何かあったのか?」
当然新任の飯山先生は姉を知らない。
隣クラスのホームルームも全部終わり、生徒が姉君さま、姉君さま、と群がっていても不思議にしか思わない。
「せ、先生、姉君さまがいらっしゃってるので! 早くホームルームを終わらせて下さい!」
ファンの女の子の一人だろう、もう、待ち切れないといった様子である。
「姉君さま? まあ、とにかく隣のクラスは終わっているようだし、本日は解散」
と言った瞬間何名かの女生徒が飛び出していった。その逆方向に逃げている例外もいるが、あれは後で捕まってお説教を受けるのでそんなに意味は無い。
「そういえば、瑠珈は剣道部に入るのか?」
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