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第23章 北海道からの知らせ
ヴィラ・ヘメロカリスの受付に一本の電話が入った。
矢崎の妻からだった。
埼玉の自宅に帰っているはずの主人と連絡が付かないので、若しかして、まだ軽井沢に滞在中ではないか?という問い合わせだった。
受付の電話に対応した森泉は、矢崎の殺人事件で刑事が捜査に来ていたのを知っていたので、その事実をありのままに伝えた。
夫の訃報を聞いた妻は、声を詰まらせながら、、
「そんな馬鹿な、そんなはずはない」
と泣きながら連呼した。
森泉は「おやげねぇなぁ」と妻の心中を慮(おもんばか)った。
彼女が、少し落ち着くのを待ってから、佐久署の電話番号を伝え、詳細を尋ねるように言って、電話を切った。
佐久署に、矢崎の妻から電話が入った。
「お気の毒ですが、旦那さんは殺害されました」
木内は答えた。
「何故、主人は殺されたんですか?犯人は見つかったんですか?」
「えーとですね。現在、鋭意捜査中であります」
「犯人は捕まってないということですか?」
妻の口調には非難の色が滲んでいた。
「まぁ、そういう事ですな。所で、奥さん。埼玉の自宅へ何度も連絡したのですが…全く出られませんでしたね。ここ数日、あなたは一体、何処で何をしていたんですか?」
「今は北海道におります。姉夫婦が、定年を機に北海道へ移住したものですから、一ヶ月前から遊びに来てるんです」
「しかしですね、何日も旦那の行方が分からないのに捜索願も出さないというのは、いかがなもんですかねぇ?」
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