一雫の憧憬

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 私以外の三人が「おつかれさま」と声を掛け合うなか、「ごめんなさい」と言う私を見た有沢先輩は、私の頬をぱちんと両手で挟んで、「そんなこと言わないの」と言った。 「でも」 「よし、今日は部内予選お疲れ様会しよう! 着替えして、親御さんに夕飯いらないって連絡をしたら校門前に集合ね」  のろのろと着替えをして校門に向かうと、先輩達は既に待っていた。 「すみません、お待たせして」 「いーよ、行こう」  有沢先輩に連れられて行ったのは、駅の裏側にあるファミレス。 「はい、じゃあ今日の反省しようね」  ドリンクバーと軽食を頼んだ有沢先輩は、一人一人にスタート前に注意したことを意識して泳げたかを確認した。その他に各自で気になった点について話し合い、私は後半で膝が曲がってしまっていたことを注意されただけで、順位については何も言われなかった。このチームには他のチームとは違って二年生の私がいるから仕方ないと思われてしまっているのだろうか。そう考えると、自分がとても場違いな気がして、先輩方に申し訳なく思った。  反省と名のつくものは三十分ほどで終わり、そのあとはただの雑談会になった。
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