第4話

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 彼女はさっと俺の腕の付け根に手を差し込んで、起こしてくれた。  あっというまの出来事だった。  彼女の細い腕のどこに男を投げ飛ばしたり、俺を立たせたりする力があるんだ ろう?  呆然としていると彼女は、  「なんかされたの?その怪我」  と言いつつ、同じく呆然としている宅配あんちゃんの方を睨んでいる。  睨まれたあんちゃんは、慌てて立ち上がった。  「ぼっ、僕はなにも。ただ、その子が転んだので、助け起こそうと」  「ふーん、へええー?一緒に交番行く?」  「ええっ、僕、ほんとに、ただ起こそうと」  俺はちょっと気の毒になった。  「あの、大丈夫です。宅配便間違えて、よそのを受け取ってしまったので、慌 てて追いかけて来て、転んだんです」  「そう?それだけに見えなかったけど?なんならもう一度投げ飛ばしとく?」  あんちゃんはすっかりおびえた様子で、  「す、すみません。許してください」  と、何度もよろけながら逃げて行った。  「ちっ、男なんて」  と、彼女はまだ不満そうにつぶやくと、こちらにはニッコリと振り返った。  「家、どこ?送ったげる」  「えっ?そんな、大丈夫です。歩けます」  「でも、膝痛そうだし。その荷物もあるし、さすがのあたしも、お姫様だっこ  はしてあげられないから、肩貸すだけだけど」  「えっ?そんな、」  と、彼女はさっと俺の腕を肩に回してしまった。  「すみません。ほんとに」  「いいの、いいの。それより足痛まない?」  「あ、少し」  と言いつつ、俺は彼女のふんわりとした部分の感触が、気になって仕方ない。  それに、メイド服みたいなのを着て、女の子に肩を貸してもらっていると  いう、なんとなく変態的なこの状況。  俺は、ますます歩きづらくなった。  それを彼女は膝が痛むせいだと勘違いして、ますますいたわってくれる。
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