第1章

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 SMSフロンティア支社に出勤したキースは、少し先を歩く同僚のカンナの背中を見つけて小走りに近寄り、軽く肩を叩いた。 「…どうしたんだ?」  振り返ったカンナがあまりにも不機嫌な顔をしていたので、朝の挨拶もせずに理由を思わず尋ねてしまった。 「別に、普通だろ」  眉間にシワを寄せ、かなりの仏頂面で普通だと言われても納得するわけがない。 「またケンカか」  半分呆れながら言うと、カンナがプイッと横を向いた。  大抵カンナが不機嫌な時は恋人のエティアとケンカした後なのだ。  そのケンカの理由も些細なことがほとんどで、性格上エティアに非があったとしても彼女から謝ることは無いので、カンナが折れなければ平行線のままなのは周知の事実である。 「いつもみたいに、お前から謝れば良いだろ」 「謝ったさ。今回は俺が悪かったから。それなのに、いつまでもアイツがへそ曲げてるから…」  カンナがうんざりしたまま言うので、キースは長期戦になりそうだなと思いながら、目の前の親友に気付かれないように小さくため息を吐いた。
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